「和蘭豆」と書いて「らんず」と読みます。和蘭はオランダのことで、江戸時代、長崎の出島を通じてオランダとの貿易が続いていました。この貿易で、オランダから持ち込んだコーヒーが日本に紹介され、オランダから来た豆という意味で「和蘭豆」と呼ばれるようになったのだとか。

西銀座通りと花椿通りの交差点の角に位置する銀座店は和蘭豆の2号店で、1号店は蒲田にあります。
現在は、銀座と蒲田(蒲田駅前店とサンライズ蒲田店)、そして2022年1月24日に秋葉原にも新しく店舗ができ、計4店舗あるそうです。秋葉原の新店は券売機を利用したセルフサービス方式で、焼肉屋さんにあるような巨大なダクトを天井に設置した喫煙喫茶のようで、銀座店とは異なるお店のスタイルで運営されているそう。

映画やドラマのロケ地として使われることが多いそう。それもそのはず、店内は木造建築の、風格のあるいかにも老舗喫茶店といった佇まいです。
全席喫煙可となっており、煙草を吸わない私ですが、美味しいアイリッシュコーヒーと、秋頃に出るモンブランなどのスイーツを目当てに、たまに通っています。

1969年創業の同店は、創業当時流通の少なかった「モカ・マタリ」の豆を使用した酸味のあるアイスコーヒーや、銅製のクープグラスに入ったアイスウィンナーコーヒーなど、看板メニューなるものが数多くあります。そしてもちろん、アイリッシュコーヒーもあります。
「和蘭豆」のアイリッシュコーヒーは、炎のパフォーマンスを楽しむことができます。
アイリッシュコーヒー ¥960

生クリーム、コーヒー、砂糖が織りなす美しい三層。
フルートグラスの中には、まるで地層を思わせる見事なグラデーションが広がり、その美しさに思わず目を奪われます。
一度、その完成形のままテーブルに運ばれた後、高さのある位置から、青い炎をまとったウイスキーが生クリームの上に注がれます。
燃え上がる一瞬の演出とともに、飲み物の魅力がさらに際立つ光景です!

さらさらとした液状の生クリームは甘さを持たず、口に含むとコーヒーのほろ苦さがじんわりと広がります。
サイフォン式で淹れられたコーヒーは、深みのある濃厚な苦味というよりも、軽やかでドライな後味が特徴的。
グラスの底には琥珀色に溶けた砂糖が沈み、飲み進めるほどに甘みが増していきますが、それでもコーヒーの苦味がしっかりと存在感を放っています。この独特のバランスが、まさにコーヒー専門店ならではのアイリッシュコーヒーといった印象を与えます。
使用されているウイスキーは、ブッシュミルズの「ブラックブッシュ」。モルトウイスキーが全体の80%を占めるモルト比率の高いアイリッシュブレンデッドで、シェリー樽熟成由来のドライフルーツやナッツのようなニュアンスが特徴的です。手頃な価格帯のアイリッシュウイスキーの中でも、個人的にはこれが一番のお気に入りです。(ストレートやロックも美味い!)
青い炎によってアルコール分が幾分飛んでいるものの、ブッシュミルズ特有の風味が確かに感じられ、その味わいが全体を引き締めています。
これぞ、大人のアイリッシュコーヒー。
せっかくなので、アイリッシュコーヒー以外のメニューも少しご紹介しますね。

写真は、秋頃にいただいたモンブランのパフェ。おそらく季節限定(もしくは期間限定)だったと思います。普段はパフェをあまり食べない私ですが、これは本当においしかった! 記憶に残る一品です。

そして、お店の看板メニューの一つ「アイスウィンナーコーヒー」。乳白色の生クリームが美しく、思わず見とれてしまうビジュアル。見た目だけでなく、もちろん味も素晴らしいです。

もうひとつ注目したいのが、洒落た銅製のクープグラス。
銅製品好きの私にはたまらない逸品で、このグラスを使ったギムレットなんかもきっと素敵だろうな、と想像が膨らみます。

それから、瓶入りで販売されているトマトジュース。私はまだ試していませんが、友人曰く「濃厚で飲みごたえのある味わい」とのこと。一度試してみたいです。

このお店、本当に素敵なメニューが多くて、訪れるたびに新しい発見があります。これからも通い続けたい、大切なお店です。