私の愛してやまない、秋田が誇る繁華街”川反”。
私は今まで6度、東京から秋田に赴いていますが、わざわざ遠方から川反まで来訪するのは、このルヴェールの存在が大きいからかもしれません。
ルヴェールを超えるバーはこの銀河系に存在しない。
私はそう思います。
バーに求めるものが全て揃っている。
ルヴェールというバーそのものの記事は、別記事に書く事にします。
アイリッシュコーヒー
なんという様式美。
桜をあしらったコバルトブルーの陶磁器に、木製の匙。
白のお皿のうえには、英字新聞がしかれています。
光沢の美しいマホガニー製のカウンター席に供せられたこのアイリッシュコーヒーは、京都の枯山水のような、わびさびの精神、そして幽玄を感じさせるものでした。
上から陶磁器のなかをのぞきこむと、清廉とした乳白色に息を呑みます。
この乳白色が、忽ちに色を変え、己の心象風景を今にも映し出そうとしているような蠱惑的な妖しさがあったのです。
口に含むと、圧倒的なバランスに驚愕します。
この上なくシルキーでスムースな口当たり。
最初からクリームとコーヒーが渾然一体となっているからか、
水を飲むようにすっと身体に入っていきます。
ウイスキーはブラックブッシュ。
スピリッツの揮発感はまるでなく、
しかしそれでいて、揺蕩うような陶酔感があります。
このアルコールの的確さは、身上です。
飲み干したあとには、溶けて琥珀色になったブラウンシュガーが顔を見せました。
“アイリッシュコーヒーは、液体状のシロップよりも、固形の砂糖を使うほうが良い“
私はそう思います。
固形の砂糖が、熱せられたコーヒーに漸次に溶け出して、
味のコントラストを生み出すからです。
ルヴェールはバーそのものも、カクテルも全て筆舌に尽くしがたいほど素晴らしいですが、アイリッシュコーヒーも負けず劣らず素晴らしかった。
ルヴェールでこんな素敵なアイリッシュコーヒーがいただけて、幸せでした。