オーストリアは、カフェ文化の国です。首都ウィーンの街を歩いていると、至るところでカフェに出会います。
日本でも馴染み深い、濃厚なチョコレートケーキ「ザッハトルテ」は、オーストリア発祥。

「CAFÉ SACHER(カフェ・ザッハー)」は、本場の絶品ザッハトルテが味わえる人気のお店です。
ここはウィーン国立歌劇場のすぐ裏手にある名門ホテル「ホテル・ザッハー(Hotel Sacher)」に併設された歴史的カフェ。ホテル自体は1876年、エドゥアルト・ザッハーによって開業されました。
ウィーンのコーヒーハウス文化はユネスコ無形文化遺産にも登録されていますが、ここはその代表格として知られています。
土曜日のお昼ごろに訪れてみると、恐ろしいほどの行列ができていました。その日はあえなく断念し、翌朝、開店一番にリベンジ。ようやく入ることができました。

内装は赤とゴールドを基調とした、まるで貴族のお屋敷のような空間。
どこまでも洗練されていて、栄耀栄華を極めたような絢爛豪華さをまといながらも、不思議と少しも驕奢な雰囲気はありません。むしろ居心地がとてもよいのが不思議。
IRISH COFFEE €9.50

なんという洗練。なんという優雅さでしょう。
これぞ、アイリッシュコーヒーの佇まいとでも言うのでしょうか。
視覚的な美しさだけではありません。どこか高潔な魂のようなものまで、この一杯から感じ取ってしまいました。
それにしても、生クリームの量がスゴい。半分、いや、半分以上が生クリームです。

上からのぞき込むと、大輪の薔薇を彷彿とさせる美しいフォルムが実に見事。
見た目の美しさに劣らず、味わいも素晴らしいです。
アイリッシュコーヒーに求められる十分な甘さがありながら、決して主張が強すぎません。
また、生クリームにはほどよい固さがあるため、飲み進めてもコーヒーと必要以上に混ざり合うことがありません。
コーヒーにはエスプレッソを使用しているそうですが、苦味や酸味が際立つことはなく、どこか河川の下流に転がる石のような、丸みを帯びた味わいです。
カフェ・ザッハーのアイリッシュコーヒーに使用されているウイスキーは「ジェムソン」。
生クリームのボリュームをのぞけば、この上なく王道で正統派な味わいのアイリッシュコーヒーです。
純粋な甘味が、じんわりと心を落ち着かせてくれます。まるで飴玉を舌の上で転がしているような、夢見心地。
店を後にしてから気づきましたが、そういえばこのアイリッシュコーヒー、アルコールをまったく感じさせませんでした。
あっぱれ、ヴィエナのアイリッシュコーヒー。


アイリッシュコーヒーのほかにも、オレンジリキュールを使用した「Maria Theresia Kaffee(マリア・テレジア・コーヒー)」や、ザッハー特製リキュールをかけてウィンナーコーヒーにかけて楽しむ「Café Sacher(カフェ・ザッハー)」といった、洋酒を使ったさまざまなバリエーションコーヒーが楽しめます。
グラスに入ったリキュールを、自らの手で生クリームのうえへ流しかけるというひと手間が、なんとも新鮮でした。



トーストとオムレツ。実にシンプルな朝食をいただきました。ちなみにセットではなく、単品でそれぞれ注文。(けっこういいお値段した…)
トーストにはバターを、オムレツには塩を。余計なものは何もありません。
日本のふわふわなオムライスを思わせるような、きめ細かな柔らかさはなく、むしろオムレツの縁は少々ゲジゲジとしている…。見た目だけなら、もう少し愛想があってもよさそうなものですが、口にしてみれば、これはこれで悪くない。飾らない朝食には、飾らないオムレツがよく似合うのかもしれません。




