ブローガンズウェイ(Brogan’s Way)蒸留所のジンマスタークラス体験記

アートと美食の街で知られるオーストラリア・メルボルンは、ジンを造る蒸留所がたくさんあります。日本で有名なメルボルンのジンといえば、日本にも輸入されている、ワイン銘醸地ヤラバレーで造られる「フォーピラーズ」や「メルボルン ドライ ジン」でしょうか。

メルボルンでつくられるジンのほとんどが日本に輸入されておらず、メルボルンにいると、オーストラリアのジンの蒸留所、そしてブランドの多さに驚きます。日本以上にクラフトジンがブームになっていると感じますね。今回は、メルボルンのクラフトジン蒸留所「ブローガンズウェイ蒸留所(Brogan’s Way)についての記事を書いていきます。



ブローガンズウェイ蒸留所は、メルボルンのリッチモンド(Richmond)という街にあり、中心街のシティから公共交通機関を使って30分ほどで行くことができます。リッチモンドは一般的な住宅街で、最初にリッチモンドに降り立ったときは「こんなところにジンの蒸留所があるのか?」と思いましたが、ちゃんと街に溶け込んでいました。一見するとバーのような外見ですが、向かい側に製造施設のような大きな建物の姿を発見。

バーの反対側にあった建物


今回は、ブローガンズウェイ蒸留所の「ジンマスタークラス」なるものをネットで予約していました。このマスタークラスとやらは、オーストラリアでは一般的なものらしく、その蒸留所のジンをより深く知るためのツアーを指します(と私は解釈しています!)。一般的なツアーと差別化し、一番ハイクラスなツアーというような意味を持っていることが多く、蒸留所によっては、お酒のブレンド体験ができたり、そのブレンドしたお酒を持ち帰れたりと、体験できる内容は異なります。体験が豪華になるにしたがって、料金も高くなります。

ブローガンズウェイ蒸留所の「ジンマスタークラス」はAUD52と、そこそこ安価な部類に入りますが、ブレンド体験やお酒の持ち帰り体験はできません。しかし侮るなかれ。ジンをより深く楽しめるような体験ができます!



さて。いざ店内に入ってみると、鮮やかなライトアップや壁の装飾にびっくり。田舎のクラブみたいで、「蒸留所」というワードから想像するイメージと、全く違いました笑。カウンターの奥にはジンの蒸留器があり、室内には樽が置かれています。そう、ここではジンだけでなく、ウイスキーも造っているんです。

数席しかないカウンターの真ん中に座り、オーナーバーテンダーの方とマンツーマンでの講義(?)を受けます。ジンをまずはストレートで飲み、その後、バーテンダーオススメのカットフルーツとトニックウォーターをグラスに入れてジントニックにして飲み、また次のジンへ・・という流れでした。テイスティングしたジンは記事の下のほうに一覧でまとめています。



1. Everyday Salvation Gin 42% ABV

    上手く撮影できず・・!

    一番最初にテイスティングしたジンはEveryday Salvation Gin。香りがとても複雑で、苦味のあるグレープフルーツに、桜や芝生、そしてミントやコリアンダーといった、ハーブとスパイスが入り混じったような香りがあります。徐々にラベンダーが顔を出し、フローラルなジンになってきました。普段、クラフトジンをあまり飲んでいないためか(ブログ主はゴードンとビーフィーターが大好き)、なかなか香りをとらえるのが難しかったですね。

    このジンに、グレープフルーツの皮をグラスの淵にこすり、ジンの中にぽんと放り込むと、一気にシトラス香が立ち上りました。グレープフルーツの皮1つで、ここまでガラっと香りが変わるのかとびっくり。思えば、カクテルのマンハッタンも、レモンピールを少し吹きかけるだけで、香りが全く変わってくるのと同じだなと。味わいも、香りと同じくシトラスのフレッシュさが弾けて、飲みやすくなりました。

    グレープフルーツの皮を入れた後は、トニックウォーターを入れてジントニックにします。ちなみに、今回ジンマスタークラスに使われるトニックウォーターは、すべてオーストラリア産でした。日本で目にしたことがないものばかり。

    ブローガンズウェイ蒸留所(Brogan's Way)

    Everyday Salvation Gin」にあわせるトニックウォーターは、「Long Rays」のオリジナルトニック。オーストラリア産のトニックウォーターで、天然の原料でつくられているため、一般的なトニックウォーターよりも甘さ控えめ。そして、繊細なシトラス香があります。

    ジントニックにすると、ジンをストレートで飲んでいたときに感じられたフローラルなアロマはあまり感じ取れなくなりましたが、きれいなシトラスの後味が印象的でした。普段、ジントニックをつくる際、トニックウォーターとジンの相性は考えたことがなかったですが、こだわってみると面白そう(沼りそう)ですね。



    2. Evening Light Gin 42% ABV

    お次は「Evening Light Gin」(写真左)。しっかりとジュニパーが香り、グレープフルーツやレモンのような柑橘の主張が強め。最初の「Everyday Salvation Gin」に比べて、香りが分かりやすく、キャッチしやすい感じがしました。(私だけかも)。

    このジンの入ったグラスに、オレンジの一片を絞ってジュースを入れ、そのまま中に落とすと、恐ろしくフルーティでフレッシュなジンになりました。「そりゃあ、フルーツを絞って入れてるんだから、フルーティになるでしょ」と思われるかもしれませんが、想像以上に変わります。フルーツって本当にすごい。

    ブローガンズウェイ蒸留所(Brogan's Way)

    このジンにあわせるのは、「Sodasmith」のNo.03です。このNo.03は、タスマニア山の湧き水とオーストラリア原産のレモンマートルでつくられており、トニック自体に柑橘のフレーバーがあります。このジントニックがとても美味しく、前に飲んだジントニックと比べると、こちらは非常に柑橘のジューシーな甘みを感じられます。ちなみに「Sodasmith」のトニックウォーターですが、No.01がスタンダードのトニックウォーターで、No.02はライトトニックウォーター。トニックウォーター以外のラインナップもあります。



    3. Hearts Afire Gin 42% ABV

    3つめは「Hearts Afire Gin」。オレンジピールのような柑橘と、ナツメグやクローブのようなスパイス感のバランスが素晴らしいジンです。舌の上に転がすと、じんわりと柑橘系の甘みが広がり、飲み込むとカルダモンのようなスパイスが鼻腔をくすぐります。やや重厚感のあるボディとオイリーな酒質のためか、飲みごたえがありますね。

    ブローガンズウェイ蒸留所(Brogan's Way)
    また撮影失敗・・。ぼけすぎていますが、ダーティートニック(左)のラベルには口紅が書かれています。

    このジンにあわせるのは「StrangeLove」のDirty Tonic。もちろんオーストラリア産です。ダーティートニックなんて今まで聞いたことがありませんでしたが、精製していない生のキナの樹皮を使用しているようです。少し液体は濁ってみえます。このダーティートニックを少しだけそのままいただきましたが、トニックウォーター特有の甘みは控えめで、ふわっとした苦みと土のニュアンスがありました。このまま飲んでも美味しいです。このジンの、ややスパイシーな個性とマッチしているトニックウォーターだと感じました。



    4. Strawberries & Cream Gin 38% ABV

    「Strawberries & Cream Gin」。その名の通り、イチゴとクリームのジン。クリームが使われているため、飲む前にベジタリアンじゃないかと聞かれました笑。ジュニパーの香りはあまり感じられず、甘みがとても強いので、カクテルを飲んでいるよう。煮詰めたストロベリージャムのような味がします。グレープフルーツをグラスに落とすと、フレッシュな酸味が加わり、甘みとのバランスがとれて上品な味わいになりました。

    粘性が高く、とろっとしておる

    この甘いジンにあわせるトニックウォーターは、一番最初に登場した「Long Rays」のオリジナルトニック」。とても甘みの強いジンなので、少し酸味が加わるとぐっと飲みやすくなりましたね。



    5. Royal Blood Gin 57.2% ABV

    57.2度と高い度数を誇るジン「Royal Blood Gin」。力強いジュニパーと、オリーブの香りが強烈なジンです。若干、塩っけやスパイス香もあります。今まで飲んだ中で一番気に入ったジンでした。青りんごを落とすと、ジンの良さはそのままに、フレッシュなりんごの香り、そして草原を思わせるようなハーバルなニュアンスが出てきました。あわせるトニックウォーターは、「StrangeLove」のCOASTAL TONICです。ダーティートニックと同じブランドです。今までのジントニックが、柑橘系主体の味わいが多かったのに対し、オリーブの渋みや塩感が楽しめる、面白いジントニックになりました。

    ブローガンズウェイ蒸留所(Brogan's Way)

    このジンはとにかくオリーブの香りが強いので、マティーニしたら面白いだろうな~と思っていたら、「これでマティーニをつくると最高だよ」とバーテンダーから一言。心を読まれたか・・!?

    せっかくなので、ジンを一通りテイスティングした後、締めにダーティーマティーニを注文しました。

    とても旨し!なダーティーマティーニ。

    このジンを使ったダーティーマティーニ。ジンのボタニカルを力強く感じられる質実剛健なマティーニになっています。これは美味い!!ちなみに、酒税の高いオーストラリアはバーのカクテルもお高いです。このダーティーマティーニは24.29ドル。でも美味いからよし!!

    ピントがヴェルモットにあっていない・・

    ヴェルモットもオーストラリアで造られているものです。こちらはドライヴェルモット。日本で見たことがありませんね。



    6. Pashlova Gin 38% ABV

    本当はジン5つで終わりらしいのですが、特別にもう1つテイスティングさせていただけることになりました。(感謝!)

    インフューズドジンの「Pashlova」。パッションフルーツとパブロバを掛け合わせたネーミングです。これでもかってくらい、パッションフルーツでした笑。香りも味も、パッションフルーツ。しかし、ちゃんとジンらしく、ジュニパーが感じられます。ブローガンズウェイ蒸留所のジンは、正統派のドライジンから、このような変わり種まで様々なラインナップがあり、本当に楽しいですね。



    61 North Whisky Single Barrel Release

    超特別に、ウイスキーも少しテイスティングさせていただけました!

    ブローガンズウェイのウイスキー「61 NORTH」。これがなかなか個性的でユニークなんです!!

    アペラワインもしくはオーストラリアントゥニーワインの熟成に使用された樽(フレンチオーク、アメリカンオーク混合)を組み替えた20L樽で熟成をさせたのち、フレンチオークのオレンジキュラソーに使われた樽で後熟させたウイスキー。ノンフィルターで、シングルバレルとなっています。(ちなみに、オーストラリアでは、シングルカスクではなくシングルバレルと呼ぶことが多いです。)

    オレンジキュラソー樽での熟成が、このウイスキーを非常にユニークにしていると感じました。もぎたてのフレッシュなオレンジの香り、熟したマンダリン、そしてチョコレートがけのオレンジピールなどなど、多様なオレンジを感じることができるウイスキー。私の好みに刺さりました。

    【テイスティングコメント】
    香り:フレッシュなオレンジやミルクチョコレート。バニラを思わせるほのかな甘い香り。

    味わい:チョコレートがけのオレンジピール。シリアルや穀物。時折、バニラや熟した柑橘のニュアンスが顔を出す。柔らかい口当たりで、滑らかな酒質。余韻は爽やかなオレンジの香りを伴い、オレンジキュラソーを思わせる。

    総評:非常に個性的なウイスキー。ストレートで楽しめるが、オールドファッションやロブロイといったカクテルにしても面白そう。度数は44.54%ながら、ときたまオレンジのリキュールを飲んでいるような感覚に陥る不思議。

    500mlボトルで価格はAUD135と少しお高めですが、これは一本買って帰りたいな・・・。オーストラリアのウイスキー、本当に面白いです。



    今回飲んだジンとウイスキーは下記の通り。これ以外にも、ブローガンズウェイ蒸留所のジンはたくさんあります。気になった方はHPをのぞいてみてください。

    1. Everyday Salvation Gin
    2. Evening Light Gin
    3. Hearts Afire Gin
    4. Strawberries & Cream Gin
    5. Royal Blood Gin
    6. Pashlova Gin
    7. 61 North Whisky Single Barrel Release



    ブローガンズウェイ蒸留所(Brogan's Way)

    今回、ブローガンズウェイ蒸留所のジンマスタークラスを参加してみての感想はざっくり↓こんな感じ。

    ①ジンとフルーツの相性の良さに気づく(知っていたつもりだったけど、分かってなかった)。普段よく飲んでいるゴードンやビーフィーターでも、気軽に試してみたい。
    ②オーストラリア産トニックウォーターのラインナップが多いので、トニックウォーター単体の飲み比べをしたい。
    ③オーストラリア特産のボタニカルを勉強したい。

    ②メルボルンのスーパーでトニックウォーターを探してみたところ、「Strange Love」のトニックウォーターを発見!ダーティートニックが無かったのは残念。



    ③については、マスタークラスの中で「ワトルシード」や「アップルガム」など、オーストラリア特産品であるボタニカルの名前が次々に出てきたのですが、見たことも嗅いだこともないので分からんぜよ・・とポカンとなってしまったので、ボタニカルそのものを知らないとなと痛感した次第です。

    ジンは、生産地の特産品であるボタニカルを使ってつくられるので、ジンを知るということは、その国や地域を知ることと同じかもしれないなと思いました。ジンの奥深さを、改めて感じさせてくれたジンマスタークラス。他の蒸留所でも、ジンのマスタークラスを体験してみようと思います。

    皆さんも、メルボルンに行かれる際は是非ブローガンズウェイ蒸留所のジンマスタークラスをチェックしてみてください!こちらにリンクを貼っておきます。



    バナー スターワード蒸留所

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