バス&フリンダース蒸留所(Bass & Flinders distillery)で最高のブランデーを楽しむ!

今回ご紹介するバス&フリンダース蒸留所は、素晴らしいブランデーとジン、そしてリキュールを生産している、オーストラリアが誇る家族経営の蒸留所。この記事では、バス&フリンダース蒸留所のブランデーを知るべく、実際に現地に訪問し、体験した内容をまとめています!(バス&フリンダース蒸留所のジンについては、別記事で取り上げる予定です。乞うご期待!)



バス&フリンダース蒸留所があるのは、オーストラリアのビクトリア州、メルボルンの南東にあるモーニントン半島。モーニントン半島はオーストラリア屈指のワイン産地の1つとして知られており、200か所以上のブドウ園があると言われています。ワイナリー以外にも、美しいビーチやオリーブ園、そしてオーストラリア随一の温泉があることでも知られている一大観光スポットとなっています。

ネットでモーニントン半島への行き方を調べてみると、「メルボルンのシティから車で1時間強で行ける」と書いてあったのですが、私は車がなかったため、公共交通機関を利用することに。私の住んでいるところはシティからやや離れたところにあったのもあり、滞在先から蒸留所最寄りのバス停まで3時間半ほどかかりました。思いのほか長旅に・・笑

モーニントン半島
逆光上等!

最寄りのバス停に着くと、想像よりも田舎でびっくり。車がないと移動が不便そうだな~というのが正直な印象で、歩道らしき道がないところもありましたが、道幅が広かったのが救いでした。

道中で、ラムの蒸留所を発見。グーグルマップを見てみると、ビールの醸造所もいくつかあるようで、ワイン以外もいろいろとお酒をつくっているんだな~と思いました。目的地である「バス&フリンダース蒸留所」の手前には大きなカフェがあり、コーヒーを焙煎している最中なのか、店の外にもコーヒーの香りが漂っていました。



最寄りのバス停から歩くこと15分。バス&フリンダース蒸留所に到着!

1階は屋内バー、2階にはルーフトップバーとなっています。ここでは、ブランデーやジンはもちろん、カクテルやおつまみを楽しむことができます。

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY)

バス&フリンダース蒸留所は、2009年、モーニントン半島に初めて設立された家族経営の蒸留所です。比較的新しい蒸留所ですが、ここで生産されているスピリッツは数々の受賞歴があり、少なくともオーストラリアのスピリッツラバーの間では、かなり有名です。アルゼンチン出身の私の友人も、ここの熱狂的なブランデーラヴァーでした笑。

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY)
ハウスメイドチキンブランデーパテが気になる


バーテンダーの方いわく、一番注文されるのはジントニックとのこと。オーストラリアでも、やっぱりジントニックは人気のカクテルのようです。

バックバーには、ジンやブランデー、そしてリキュールの数々。たくさんのラインナップがあり、心躍ります。ジンだけでも10種類以上ありました。一番人気のジントニックに使われるトニックウォーターはフィーバーツリー。使用するジンによって、トニックウォーターも使い分けるというこだわり!



ここの蒸留所では、建物の外から樽や蒸留器が見える構造になっていました。(もちろん無断で入ってはいけません。)今回、蒸留所長ホリー氏のご厚意で蒸留所内を見学させていただけました。バーが混雑しているときは見学が難しいようですが、スタッフの方が空いているときは見学できることもあるようです。私は金曜日の早い時間に行ったので、お客さんはまだ誰もいませんでした。(ラッキー!)

蒸留器は、ブランデー用のシャラント式蒸留器と、ジンの蒸留器の計2基がありました。ブランデーを貯蔵している樽は、フレンチオークです。

オーストラリアでは、ワインやジンは盛んに造られているものの、ブランデーを生産している蒸留所は非常に少ないです。メルボルンのあるビクトリア州でブランデーを生産しているところは、私が調べた限り、ここ「バス&フリンダース蒸留所」のみ。オーストラリアの人々にとって、ブランデーは”グランドマザーの飲み物”というイメージがあるようで、飲む人はそう多くはないのだそう。日本と同じく、ブランデーはウイスキーやジンに比べ、飲む層がかなり限定されているようです。ちなみに、蒸留所長ホリー氏は大のブランデーラヴァーらしく、意気投合できて、楽しくお話できました!

いよいよお待ちかねのテイスティング。バーのメニューにある「ブランデーフライト」では、その名の通り、バス&フリンダース蒸留所のブランデーを楽しむことができます。

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) ブランデーフライト

ブランデーフライトの基本メニューは下記の1~3ですが、追加で4もテイスティングすることができます。

1. EAU DE VIE 40%
2. NOBLE STRANGER
 40%
3. OCHRE
 41%
4. ANNIVERSARY CUVÉE
 42%



EAU DE VIE 40%

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) ブランデーフライト

単一のブドウ園からとれたビクトリアンシラーズを、シャラント式ポットスチルで2回蒸留した、樽熟成をしていないニューメイクスピリッツです。シラーズのオードヴィーとは、いかにもオーストラリアって感じですね!

ちなみに、オーストラリアやその他ニューワルドの南アフリカ、アルゼンチンの「シラーズ」と、原産地フランス:コート・デュ・ローヌでおなじみの「シラー」は同一品種です。シラー(Syrah)がオーストラリアに持ち込まれた際、現地ではScyrasと呼ばれていたため、シラーズ(Shiraz)となったのだとか。

【テイスティングコメント】
香り:アタックは干しシイタケ。徐々に干したブドウが顔を出す。グラッパを彷彿とさせる香り。

味わい:ピリっとしているが、穏やかな酒質。アタックはブドウの皮を思わせる渋み。徐々にブドウの甘みがじんわりと花開いていく。粘性の高さからも分かる通り糖度が高いのか、豊かなブドウのジューシーさを感じられる。

総評:樽熟成していないオードヴィーならではの素材の良さ、芳醇なブドウの甘みを楽しめる素晴らしい1本。ニュースピリッツながら、柔らかな口当たり、滑らかなくちどけ。リッチで芳醇な味わい。素晴しく洗練された一本。ニートも素晴しいが、ボディがしっかりしているので、ショートカクテルにしても面白そう。



NOBLE STRANGER 40%

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) ブランデーフライト

ノーブルストレンジャー。100%シャルドネの、2~6年熟成した原酒をブレンドしているブランデー。バス&フリンダース蒸留所の主力商品、主力ブランデーです。

【テイスティングコメント】
香り:レーズン、ザラメの甘やかな香り。花束に、甘みのあるスパイス。

味わい:甘みのあるスパイスの数々に、バニラのような甘み。余韻にはオレンジピールのような清涼感。バランスがとれた味わい。

総評:この熟成年数とは思えないほど、円熟した味わい。甘み主体だが、花のニュアンスと柑橘系の爽やかさが、このブランデーをよりハイクラスなものにしている。

ノーブルストレンジャーを主力ブランデーとしているのも納得。甘みのあるフレーバーがしっかりしているので、ブランデーを飲みなれていない人にも好まれるのではと感じました。ただ甘いだけでなく、フローラルでスパイシーな要素もあり、とてもバランスのよいブランデーなので、ブランデー玄人(?)にもオススメできます。他のラインナップと比べて値段がお手頃なのも嬉しいところ。



OCHRE 41%

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) ブランデーフライト

アランビックスチルで2回蒸留し、5~8年熟成の原酒をブレンドして造られたヴィクトリア産シャルドネ100%のブランデー。ちなみに、「OCHRE」は黄土色の意味。

【テイスティングコメント】
香り:アタックはワインビネガー、ドライアプリコット、熟したリンゴ。徐々にレーズン、キャラメルのような甘やかな香りと、ハーブ、そして腐葉土が出現。上質なオロロソのような円熟味。

味わい:クローブのようなスパイス、素焼きのアーモンド。オレンジ、オーク樽、シイタケ。フレッシュなリンゴを思わせる可憐な甘みも感じられる。非常に複雑で玄妙な味わい。

総評:非常に個性的で、複雑。香りと味わいのギャップが面白く、時間をかけて飲みたいブランデー。ボルドーグラスやグラッパグラスで飲んでも面白そう。

じっくりとボトルに向き合いたいと思わせるような、複雑で個性的なブランデー。まだまだ知らない世界があると思い知らされます。



ANNIVERSARY CUVÉE 42%

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) ブランデーフライト

ブランデー10周年を記念した特別なブランデー。コニャック「ノルマンディ・メルシエ(Normandin Mercier)」とのコラボボトル。バス&フリンダース蒸留所で造られたブランデーと、ノルマルマンディ・メルシエのコニャックがブレンドされています。タランソー社のフレンチオークのみで熟成。

【テイスティングコメント】
香り:フルーツの数々。マスクメロンにイチゴ、リンゴにアプリコット。南国のトロピカルフルーツというより、高級ホテルのテーブルに飾られたバスケットいっぱいのフルーツの数々を思わせる洗練されたアロマ。

味わい:レーズンのような甘さに、オレンジの清涼感。熟したリンゴや花梨のような果実味。水平線のように長い余韻。

総評:様々なフルーツの要素を凝縮した、洗練されたブランデー。昼下がりの午後に飲みたい。

あまりの飲みやすさにびっくり。スッと身体の中に入って、溶けていくような感覚。もうちょっと飲みごたえがあると嬉しいなとも最初は思いましたが、このブランデーの余韻の美しさは、ちょっと鳥肌モンでした。



いやー、面白い!!

最初のオードヴィーは、雑に説明するのであれば、「甘くて飲みやすいグラッパみたいなブランデー」。シラーズの甘みが、舌の上で徐々に花開いていくのがとても心地よいです。ワインだと感じられないシラーズの甘みを、ワインを蒸留したブランデーでは感じることができる不思議。一般的なグラッパよりも癖が少ないため、グラッパを飲みなれていない方にも、非常にオススメ。

ちなみに、このオードヴィーはシラーズですが、それ以外はシャルドネのブランデーとなっています。なぜ、オードヴィーはシラーズなのか?と疑問に思った方もいるはず。

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) オードヴィー

ご厚意で、シャルドネのオードヴィーも少し飲ませていただきました。(注:製品化されていません。)なるほど・・シラーズに比べて、甘みはほとんどなく、ブドウの種や皮を思わせるようなフレーバーがあり、ワイルドな味わいです。確かに万人受けはしないだろうなと思いましたが、私はかなり好みでした笑。野趣あふれる複雑な風味が癖になる感じ。これ、刺さる人には刺さるんじゃないかなと思います。

バス&フリンダース蒸留所のブランデー「NOBLE STRANGER」「OCHRE」「ANNIVERSARY CUVÉE」は、三者三様、それぞれがまったく異なった個性があり、とても面白いです。個人的な印象ですが、コニャックよりも、親しみやすくとっつきやすいイメージを持ちました。



これでテイスティングは終わりかと思っていたところ、ちょっといろいろあり蒸留所長のご厚意で、他のブランデーも試飲させていただけることになりました・・!



DISTILLER’S SELECTION SINGLE CASK BRANDY

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) ディスティラーズセレクション シングルカスク

最高級のリムーザンオーク樽で、6年間熟成されたブランデー。シングルカスクで、度数は48度のカスクストレングス。冷却濾過をしていないブランデー。

【テイスティングコメント】
香り:レーズンにアプリコット、白い花々。上質な紅茶にマーマレード。

味わい:ドライフルーツやトフィーのような甘みに、ナツメグのスパイス。穏やかながら力強い余韻には、オレンジピールの清涼感を伴う。

総評:素晴らしいの一言に尽きる。洗練されていながら、親しみやすさのあるブランデー。カスクストレングスだが48度という低(?)度数につき、つい飲みすぎてしまいそう。

現在はもう売り切れ状態の、大変貴重なブランデー。現在は販売も、蒸留所内での提供もしていないものになります。とにかく、めちゃめちゃ美味しいです。ボトリング本数はわずか140本。そりゃあ、この美味しさであれば、すぐ売り切れるでしょうなあ・・・



SPICED CHRISTMAS BRANDY 40%

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) スパイスドクリスマスブランデー

クリスマスプディングの材料(ドライフルーツ、オレンジの皮、ナツメグ、シナモン、クローブなど)を10日間以上ブランデーに浸漬。単一のブドウ園から調達したビクトリア州産のシャルドネを100%使用し、2~6年間、コニャック樽で熟成。

【テイスティングコメント】
香り:ドライアプリコット、レーズン、オレンジピール。徐々に、ナツメグやシナモンが現れる。

味わい:スターフルーツのような南国を思わせる果実味に、ナツメグやクローブのスパイスの数々。

総評:クリスマスのイメージにぴったりな、ワクワクするブランデー!クリスマスケーキと一緒にいただきたい。

甘さ全開のスパイスドブランデー!一口飲んで、あ、クリスマスだって感じ。クリスマスケーキよりクリスマスを感じます。これがあれば、ケーキはいらないかも。



MADAME MARMALADE ORANGE LIQUEUR 40%

バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY) オレンジリキュール

コニャックベースのオレンジリキュールに、2年、4年、7年熟成のブランデーをブレンド。ビクトリアンオレンジの皮と少量のワトルシード(オーストラリア特有のボタニアる)をブレンドしているこだわりのリキュール。

【テイスティングコメント】
香り:極上のマーマレード。シナモンやクローブがほのかに香る。

味:マーマレードやオレンジの皮の砂糖漬け、かすかにオーク樽やバニラ、ナッツのニュアンス。

総評:高貴なトリプルセック。一般的なオレンジリキュールよりも、オレンジピールのようなニュアンスが際立っている印象。

ストレートでも十分楽しめる、ハイクオリティなオレンジリキュール。そのままロックにしても美味しそうだなと思いました。これでサイドカーをつくったら、美味いだろうな~・・



バス&フリンダース蒸留所(BASS&FLINERS DISTILLERY)
1階のバックバー

フランスのコニャックやアルマニャックとも異なる、オーストラリアの個性を感じるブランデーでした。どれも本当に美味しい!バス&フリンダース蒸留所のブランデーは味わいが柔らかく、優しい甘みがあって親しみやすさを覚えるものが多いと感じました。

ほろ酔い気分で、蒸留所を後にしました。家族経営ならではの、なにか温もりみたいなものが感じられる、本当に素敵な蒸留所でした。



まだ外は明るい時間だったので、行く道中で見かけたラム蒸留所に立ち寄ろうと思いましたが、腹ごしらえがまだだったので、ベーカリーへ。(ちなみにずっと気になっていた、コーヒーの香りをまき散らしていたカフェはちょうど閉店の時間で、ちょっと残念。)

ベーカリーのピザは、1つ10ドルほど。高いな~と思いつつ、そこそこボリュームがあるので、まあ良しとします。結局、ピザだけでは足りなかったので、”とにかく安い”でおなじみのスーパー「ALDI」で胡桃を買い、むさぼりながらラムの蒸留所へ向かいます。続きの記事は現在準備中です。乞うご期待!

ジミーラム蒸留所(Jimmy Rum Distillery)

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