【ゴスペルウイスキー】世界最高峰のライウイスキーを味わう

★この記事は、ライウイスキー好き、もしくはニューワールドのウイスキーに興味がある方にオススメです!


「世界にはまだまだ知らないウイスキーがあるのだな~」と、今日この頃よく思います。今回の記事は、そんな思いにさせてくれたオーストラリアの「ザ ゴスペル ウイスキー蒸留所」のウイスキーについてです。アメリカやカナダのライウイスキーをこよなく愛するライウイスキーラヴァーにこそ、知ってほしいウイスキー。是非読んでいってください!

ゴスペルウイスキー


現在、私はオーストラリアのワーキングホリデービザを取得し、オーストラリア第2の都市であるメルボルンに滞在しているのですが、ここに来てから、「オーストラリアにはこんなに美味しいお酒があるのか」と、驚かされることが多々あります。

オーストラリアのウイスキーといえば、スターワード蒸留所かネッド蒸留所くらいしか知らなかった私ですが、メルボルンだけでも、ウイスキーを造っている蒸留所はたくさんあることを、現地に着いてから知りました。そして、ここ最近、私を最も震撼させたのが、ザ ゴスペル ウイスキー蒸留所(The Gospel Whiskey)のライウイスキーでした。

近年、人気に拍車がかかっているライウイスキー。オーストラリアでもライウイスキーラヴァーが増えているようです。2024年7月6日(土)、ザ ゴスペル ウイスキー(以下、ゴスペル)の「オープンデー」というイベントがあり、行ってきました。



オープンデーは事前予約制となっていて、当日はたくさんの人でにぎわっていました。実際に蒸留所内にあるスチルや発酵槽を見ながら、蒸留所で働いている方から製造方法について説明を聞くことができるほか、ウイスキーのテイスティングや、オープンデー限定販売(と思われる)のカスクストレングスウイスキーを購入することができました。

ゴスペルウイスキーとはどんなウイスキーなのかについて、オープンデーで見聞きしたこと、体験したことを混ぜながら下に書いていこうと思います。

ゴスペルウイスキー


■そもそも、ゴスペルウイスキーとは?

The Gospel Whiskey(以下、ゴスペル)では、オーストラリア産のライ麦を100%使用して、小さなチームが全て手作業でライウイスキーを造っています。

ゴスペルが使用するライ麦は、ビクトリア州と南オーストラリア州の境界にあるマレー・マリー(Murray Mallee)地域にある1軒の農家が栽培しているもの。この地域のライ麦は、非常に乾燥した厳しい気候の中で育っており、小粒で密度が高く、独特で素晴らしい味わいがあることで有名。

ライウイスキーといえば、アメリカやカナダといった北米の国を思い浮かびますが、オーストラリアの乾燥した気候がアメリカと似ていたため、アメリカンスピリッツの概念をオーストラリア風に再構築しようという理念のもと、ゴスペルウイスキーが生まれたそうです。


ゴスペルウイスキー

ライウイスキーの製造は、糖化させる際に粘り気のあるドロドロとした液体となるなど、コントロールが難しいことで知られており、大麦麦芽(モルト)を使用しないライ麦100%のウイスキーの製造は特に難儀を極めると思います。ライウイスキーが有名な北米のアメリカやカナダでも、ライ麦100%のライウイスキーはほとんど造られておらず、とても珍しい存在です。

ちなみにアメリカでは、ライ麦が全体の51%以上を占めていれば(※)、ライウイスキーを名乗ることができます。(※正確に記載すると、原料となる穀物の51%以上がライ麦で、アルコール40%以上、80%以下で蒸留し、内側を焦がしたオークの新樽で熟成させたものがライウイスキーと規定されており、この条件で2年以上熟成を施したものは「ストレートライウイスキー」と表記することができます。)

ゴスペルウイスキー


アメリカのライ麦100%ウイスキーで思い浮かぶのは、日本でも最近酒屋で目にするようになったシカゴにあるコーヴァル蒸留所の「コーヴァル シングルバレル ライ ウイスキー」くらいですね。(私はまだ飲んだことがありません!)

ライ麦100%ではありませんが、ライ麦を95%以上使用した「テンプルトン・ライ」は私オススメのストレートライウイスキーです。生産量が少なく、ほとんどがアメリカ国内で消費されているこのライウイスキーは、非常にスムースな飲み口と、ライ麦由来の豊かな香味が楽しめる最高のライウイスキーの1つ!



カナダのライ麦100%ウイスキーだと、ビッグブランドのアルバータ蒸留所「アルバータ・プレミアム」、ハイラムウォーカー蒸留所の「カナディアンクラブ 100%ライ」でしょうか。カナディアンクラブはサントリーが輸入代理店を務めていますが、100%ライは取り扱いしていないみたいですね。

カナディアンクラブ12年 マンハッタン
カナディアンクラブ12年。
私の好きな高知のバーで撮影。

カナディアンウイスキーのほうが、アメリカンウイスキーに比べて比較的安価にライ100%のウイスキーを楽しめるイメージがあります。日本ではほとんど知られていないですが、J.P.Wiser’s蒸留所も100%ライ麦のウイスキーを出しています。(Lot No.40というラインナップのウイスキーがカナダで人気!)

・・・とここまで、ちょっと脱線してカナダやアメリカのライ100%ウイスキーについて書きましたが、とにかく、世界的に見てもライ麦100%のウイスキーは珍しいんです。



話をオープンデーに戻します。

ゴスペルウイスキー ウイスキーサワーハイボール

↑オープンデーの開場時刻の10時ちょうどに入場し、場内をフラフラしていたら、ウイスキーサワーハイボールの缶を1本もらいました。爽やかなシトラスの香りと、マラスキーノチェリーの漬液のようなニュアンスがあり、ハイクオリティなRTD缶。実際に買うと、1缶10ドル! 私より少し後に来ていたウイスキーラヴァーとこれを飲みながら談笑し、11時のツアー開始まで待ちます。



ツアー開始の11時になると、会場内外には優に30人を超える人集り。この日は何回かに分けてツアー(製造方法の説明等)が行われました。

さて、今回ツアーでお話を聞けたのは、主に発酵と蒸留について。糖化や熟成についてのお話は(おそらく)ほとんどなかったので、個別に確認することに。ざっくり下にまとめています。

ウイスキーに使用される未発芽のライ麦は、粗い粉に挽かれて、およそ1.6トンのライ麦粉が毎朝6時にハンマーミルに投入され、特別に設計されたマッシュタンで麦芽汁(マッシュ)に変わります。マッシュタンの正確な温度制御と高速撹拌機によって、高品質なライ麦が持つポテンシャルを十分に引き出すことが出すことが可能とのこと。

ゴスペルウイスキー

ウォッシュはマッシュタンから発酵槽に移されて、数日間発酵されます。発酵槽はステンレス製。発酵中のもろみを実際に見せていただきました。ツンとした発酵臭はなく、やさしい麦の甘い香りがします。

発酵が終わった後は、自社で設計・製造した高さ6mのコラムスチルで最初の蒸留、初留を行います。キリンの体長(頭までの高さ)がおよそ4.5~5.8mらしく、大きなキリンほどの背丈のあるコラムスチル。これを自社で造ってしまうのは本当にすごいですね・・・!

蒸留所によっては、初留・再留ともにポットスチルで行うところもあるようですが、ライウイスキーの場合は一般的に、初留をコラムスチル、再留をポットスチルで行います。ゴスペルでも一般的なライウイスキー製法と同じく、コラムスチルで初留を行い、ローワインを生産したのちは、特注の銅製ポットスチルで2回目の蒸留である再留を行い、ニューメイクウイスキーを造ります。

ゴスペルウイスキー ニューメイク

ニューメイクスピリッツ、なんと試飲可能でした! 度数は74.6%。製品化されているものは加水されているものも少なくないですが、これは加水されていないもの。ライ麦由来のワイルドな風味がダイレクトに感じられると思いきや、想像以上に穏やかな味わい。もちろん、ニューメイクなのでスピリッティではあるのですが、想像以上にまろやか。ピリッとスパイシーというより、ライ麦の内に秘めた滋味を液体に宿しているイメージ。

さて、樽について。蒸留所内にある樽は、全てアメリカンホワイトオーク材で、ヘビートーストチャー(内側を強く焦がしているもの。スピリッツにフレーバーを与える影響力が大きい)のものが多かったです。

ゴスペルウイスキー

上の写真は、へビートーストチャーの樽の一部。黒い部分を触ると、指が黒く煤けました・・!


ゴスペルでは、アペラワインのソレラシステムで熟成したライウイスキーである「ソレラライ」(後に詳述)というものがあるのですが、ソレラシステムの樽は見つからず。聞いてみると、オープンデーの会場とは異なる場所にあり、一般公開はしていないそうとのこと。・・残念!

「ソレラライ」の熟成には、長年の研究開発から学んだことを取り入れ、セカンドフィルのアメリカンホワイトオークや新樽、そしてオーストラリア産赤ワイン樽からなる5層のソレラシステムで熟成されているとのこと。ソレラシステムは、スペインの酒精強化ワインであるシェリーの伝統的な熟成方法(こちらの記事をご覧ください)ですが、それを「ソレラライ」に適応させることで、甘さと風味の完璧なバランスを実現させているようです。



ゴスペルウイスキー

ツアーの最後は、お待ちかねのテイスティング! 通常販売品2種と会場限定品(と思われる)のカスクストレングス2種の計4種を無料でテイスティングすることができました。感謝!



ゴスペルウイスキー

通常販売品はこちら。左の緑のボトルが「ストレートライウイスキー」で、赤色のボトルが「ソレラライ」

「ストレートライウイスキー」は、最低2年間、様々なチャー(樽内部の焦がし)レベルのアメリカンホワイトオーク樽で熟成させたライ麦100%のライウイスキー。プラカップにちんまりと試飲しただけなのでしっかり味わえていないですが、樽由来のバニラやキャラメルといった甘みに、ライ由来のスパイス、そして余韻には洋ナシや青りんごを思わせる爽やかな甘みを感じます。北米のライウイスキー特有のスパイシー感は控えめで、優しい甘みが特徴的。

「ソレラライ」は、「ストレートライウイスキー」よりも甘みが強く、フレッシュなリンゴや洋ナシといったフルーツではなく、アプリコットジャムやザラメ、そしてトフィーのような甘みを感じます。スパイス感は若干弱め(プラカップで飲んだからかも?)ですが、とてもユニークなライウイスキー。

ニューメイクスピリッツを飲んだときに感じたライ麦の柔らかい滋味のようなものを、双方から感じました。これは、樽熟成によるものではなく、原料本来の持つポテンシャルを、発酵や蒸留の過程で存分に引き出すことによって生じたものなのだと感じました。



ゴスペルウイスキー

カスクストレングスの2種も素晴らしく、これもまたユニークなウイスキーだったので、双方とも買うことにしました。こちらのカスクストレングスは、購入するとハンドフィルで直接ボトリングして、持ちかえることが可能! (今回、記事のボリュームが想定以上に長くなってしまったので、カスクストレングス2種のテイスティング内容は別記事にアップしようと思います。)

ゴスペルウイスキー

「ライウイスキー=スパイシー」というイメージが完全に払拭されました。もっとライウイスキーについて、知りたくなっちゃいましたね・・!(フィンランドにあるキュロ蒸留所のライウイスキーが最近ちょっとした話題になっていたので、個人的に気になっています。)



オープンデーの終わりは午後5時。私は午後の3時過ぎまで滞在していましたが、来場者がひっきりなしに来ていて、会場はどんどん賑やかに。

屋外ではソーセージを焼いていて、無料で食べることができました。パンに挟んで、バーベキューソースかケチャップをかけて食べます。

ゴスペルウイスキー

私のライウイスキーに対する価値観を変えたゴスペルウイスキー。北米のライウイスキー好きにこそ是非一度飲んでほしいと願うブランドです。

オーストラリア(メルボルン)に訪れていなければ、おそらく知ることのなかった、少なくとも平行試飲することはなかったであろう「ゴスペルウイスキー」。

ニューワールドのウイスキー探求の面白さに目覚めつつある、今日この頃です。

ゴスペルウイスキー ムーンシャイン
オープンデーでゲットしたムーンシャイン。ネットでは売り切れのレアな品。
気が向いたらこれについても記事を書こうと思います笑。

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