飲食店が立ちならぶ京都河原町の路地に、『築地』という喫茶店があります。
創業1934年の老舗で、喫茶店好きなら誰もが知っている有名店。
京都三大喫茶店の一つに数えられているそうです。
創業者は俳優を目指されていたようで、店名は東京の「築地小劇場」からつけたそう。
ここの名物はウィンナーコーヒー。喫茶店定番のブレンドコーヒーはありません。
ネルドリップで淹れられた深煎りのコーヒーに、ホイップクリームをのせたウィンナーコーヒーは、終戦直後から提供を始めたのだそう。
物資の乏しい当時、攪拌しても泡立たない粗悪なクリームを使っているお店が多かったという背景から、ちゃんとしたクリームを使ったウィンナーコーヒーが徐々にお店の顔になっていったようです。
ウィンナーコーヒーが有名な同店ですが、ウィンナーコーヒー以外にも推しドリンクがあります。
それは、夏季限定のアイリッシュコーヒー。
アイリッシュコーヒーは冬のカクテルの代名詞的存在で、誕生の歴史・背景を考えても、やはり冬に飲まれるべきものでしょう。
バーだとまず冬しか提供していないところがほとんどで、喫茶店では大抵、通年メニューにオンリストしていますが、それでも夏だけ出しているお店は、ここだけだと思います。
夏季限定の理由は見てすぐ分かりました。
ホットではなく、アイスのアイリッシュコーヒー。
グラスの中には氷が涼しげに浮かんでいます。
お酒はウイスキーではなく、ブランデーを使っています。サントリーVSOPの瓶が、座っていた席からちらりと見えました。
軽やかな味わいのコーヒーとブランデーの相性が想像以上によく、ぐいぐいと飲めてしまいます。
グラスの約半分ほどまでたっぷりと入った生クリームも、甘さがないのでくどくなく、するすると飲めます。
ブランデーの高貴な香りをまとった少し風変りな飲み物は、まさに夏に飲むべき、最高のカクテル。
お酒を使ったもので、ジンコーヒーというものもありました。
コーヒーにジンを入れたシンプルなもので、ジンの清涼感ある香りがことのほかコーヒーによく合っている不思議。
ジンはたしかボンベイサファイアだった記憶。。。
ムースケーキ。
同じく京都の老舗喫茶店『フランソワ喫茶室』でもムースケーキを食べましたが、京都で親しまれているのでしょうか。
主役のコーヒーの味わいを邪魔しない甘さ控えめのムースケーキ、美味でした。
重厚感あふれる装飾品・調度品の数々。
西欧の古城の一角のような洗練された雰囲気もありますが、英国風のパブのような親しみやすさも同時に感じました。
ずっと変わらず、残り続けてほしい喫茶店です。
夏はアイリッシュコーヒーを、冬はウィンナーコーヒーを飲みに、足を運びたい。
古き良き京都って、観光名所だけじゃなく、こういう喫茶店でも感じられるのだなあとしみじみ。