アイリッシュコーヒーという飲み物を知っていますか。名前を耳にしたことがあっても、どのようなコーヒーなのか分からない方も多いのではないでしょうか。
日本だけでなく世界中200以上のカフェや喫茶店、そしてバーでアイリッシュコーヒーを飲んだアイリッシュコーヒー愛好家である私が、楽しみ方や美味しいレシピを紹介します。
■アイリッシュコーヒーとは
アイリッシュコーヒー(Irish coffee)とは、アイルランドのウイスキー「アイリッシュウイスキー」を使ったコーヒーカクテルです。アイリッシュウイスキーとコーヒー、そして生クリームと砂糖が使われています。(※砂糖の代わりにシロップや蜂蜜を使ったり、甘みをなくすために砂糖を入れないレシピもあります。)
アルコールとカフェイン、そして糖質を一度に摂取できる素晴らしい飲み物なんです。
■アイリッシュウイスキーとは
世界5大ウイスキーの1つに数えらえるアイルランドのウイスキーをアイリッシュウイスキーといいます。3回蒸留をしているものが多く(スコッチウイスキーの多くは2回蒸留)、軽くてクリーン、雑味のない滑らかでクリアな味わいのものが多いです。アイリッシュコーヒーにオススメのアイリッシュウイスキーは下に紹介しています!
■アイリッシュコーヒーの発祥
アイリッシュコーヒーは、アイルランドの空港待合室のパブ(バー)で考案されたホットカクテルです。1943年、当時アイルランドの国際線中継地であったフォインズ水上飛行場のバーでシェフとして働いていたジョー(ジョセフ)・シェリダンが、極寒の季節の中、乗り継ぎの飛行機を待つ乗客に温まってもらおうと考案したものがアイリッシュコーヒーと言われています。給油のために、飛行艇から降ろされた乗客は寒さに震えながら、ボートでシャノン川を渡り、待合室のパブへ行っていたそうです。
1940年にはシャノン空港が開港し、飛行艇の時代は終わりを迎えることになりますが、空港でもアイリッシュコーヒーは飲まれるようになります。その後、アイリッシュコーヒーは乗客たちによって世界中に伝わっていきました。1952年には、アメリカのサンフランシスコにあるカフェ「ブエナ・ヴィスタ」のメニューにオンリストされており、一列に並んだグラスへ豪快にウイスキーとコーヒーを注いでアイリッシュコーヒーをつくる動画が最近(2023年12月頃)話題になっていました。
■作り方・レシピ
アイリッシュコーヒーのつくり方は、少しだけ手間がかかります。ひと手間を惜しまないことが、美味しいアイリッシュコーヒーをつくるうえで大切です。
・コーヒー 120mm(はじめての場合は、深煎りのものを使ってみましょう)
・アイリッシュウイスキー 30mm
・生クリーム 20~30mm
・砂糖 適量(蜂蜜やシロップで代用してもOK)
1.耐熱グラスにお湯を入れて温めておく。生クリームは泡立てなくてもよいが、七分立てほどにしておくのがオススメ。生クリームに少し甘みを入れるために、少しだけ砂糖やシロップを加えてもよし。
2.グラスが温まったらお湯を捨て、砂糖とウイスキーを入れてフランベをする。フランベをするとアルコールが飛び、麦の甘みが出てくる。少し手間がかかるが、フランベをしたほうが格段に美味しくなる。
3.抽出したコーヒーを加えて、砂糖が溶けすぎない程度に、しっかりステア(かき混ぜる)。ステアが足りないと、生クリームとコーヒーが美味く層にならず、混ざってしまう。
4.生クリームをコーヒーの上にフロートする。生クリームはしっかりと冷やしておくのが、綺麗な層をつくる秘訣。
5.お好みで生クリームの上にナツメグやシナモン、クローブといったスパイスや、アーモンドスライス、ココアパウダーを振りかけてもよし。スティックタイプのシナモンをさしてもOK。
■【中級編】アイリッシュコーヒーをより美味しくつくるために
1.コーヒーは煎りたて&挽きたてが美味しいです。なので私はいつも焙煎する前の生の状態の豆を購入し、家で焙煎しています。
コーヒー豆焙煎器「煎り上手」があれば、家で簡単に焙煎ができちゃいます。この焙煎器に生豆を入れて、ガスコンロの火にあてるだけ。まんべんなく火が通るように、円を描くようにゆっくり回して豆を回転させ、好みの焙煎具合になったら火から引き上げるだけ。
2.ウイスキーをフランベする際は、アルコールランプがセットになったアイリッシュコーヒー専用の銅製ウォーマーがあるので、気になる人はチェック(↓)してみてください。もしかしたら、アイリッシュコーヒーを提供しているバーで目にしたことがあるかもしれません。グラスを寝かせて回転させながら、グラスを火で温めて、最後にグラスの淵に火を近づけてウイスキーに着火させます。青い炎はグラスの中にコーヒーを注ぐと自然に消えるのでご安心を!
【注】耐熱グラスであっても、「耐火」ではありません。グラスが十分に温まっていない状態で長時間火にあてると、割れてケガをするおそれがあります。グラスを火にあてる際は、グラスを十分お湯で温めた後、一か所に火があたらないように回転させましょう。
3.生クリームの固さはお好みですが、少し角が立つくらい泡立てたクリームが私のオススメです。フロートさせる際はバースプーンが便利で、スプーンの丸まっているところを伝わせてコーヒーの上にそっと乗せるようにすると上手くできます。
■オススメのアイリッシュウイスキー
アイリッシュコーヒーに使うアイリッシュウイスキーは、スーパーで手に入る安価なものでかまいません。むしろ、シングルモルトや熟成年数の長い高価なものは、コーヒーとの相性を見極めないといけない(詳しくはこちらの記事をご覧ください)ので、下に紹介している代表的なアイリッシュウイスキーを使うことをオススメします。
1.ブラックブッシュ
私が一番オススメしたいのは、ブラックブッシュ。創業1608年、世界最古の蒸留免許を持つブッシュミルズ蒸留所のウイスキーです。熟した果実を想わせる香りと重厚なボディが特徴で、深煎りコーヒーの強い主張にも負けない力強さがあります。
2.ジェムソン
世界で最も売れているアイリッシュウイスキー「ジェムソン」。深煎りはもちろん、浅煎りのコーヒーにも合うのが特徴です。コーヒーの主張が非常に強い場合はジェムソンの良さを少し感じにくいこともあるので、私はいつも朝煎り~中煎りのコーヒーに合わせています。
3.タラモアデュー
ジェムソンに次ぐ人気の「タラモアデュー」。大麦の甘み・風味が感じられるアイリッシュコーヒーに仕上げることができます。↓陶器製のボトルもあるようです。
★アイリッシュウイスキーとコーヒーの相性を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
■ベースのお酒を変えてみよう
アイリッシュコーヒーはアイリッシュウイスキーがベースとして使われていますが、お酒を変えると、違った名前のカクテルになります。
・スコッチウイスキーを使うと:ゲーリックコーヒー(Gaelic coffee)
・カルヴァドスを使うと:ノルマンディーコーヒー(Nomandy coffee)
・ラムを使うと:ジャマイカンコーヒー(Jamaican coffee)
・アクアビットを使うと:スカンジナビアンコーヒー(Scandinavian coffee)
【アクアビット(アクアヴィット)とは?】
北欧を代表するジャガイモを主原料とした蒸留酒です。ハーブ(キャラウェイ・アニス・フェンネルなど)で香りづけをしているため、独特の風味があります。ほとんどの銘柄が樽熟成をせずにボトリングしている無色透明のホワイトスピリッツです。
私の一押しは「オールボー タッフェル アクアビット」。デンマーク王室でも愛飲されている伝統的なアクアビットで、柑橘系とアニスの香りがあるすっきりとした味わいがあります。冷凍庫に入れてキンキンに冷やして飲むととても美味しいです。
ベースのお酒を変えるだけで全く風味の異なるカクテルになります。気になる方は是非トライしてみましょう!