オーストラリア本土から約240km離れたところにあるタスマニア島。島全体の3割ほどが国立公園に指定されているタスマニア島は、実はウイスキーが盛んに造られており、タスマニア島のウイスキー蒸留所は、なんとオーストラリア本土にある蒸留所数よりも多いんです!
タスマニアでは、毎年冬の時期にあたる8月に、タスマニアンウイスキーウィークという一大イベントが開催されます。タスマニアのウイスキー蒸留所が、州都であるホバートで一週間近くにわたりイベントを行う、いわば南半球のアイラフェスティバルのようなものです。
今回、タスマニアンウイスキーウィークに単騎で参加してきたので、体験談をブログ記事にしていきます!
タスマニアへは、美食とアートの街、オーストラリア第2の都市であるメルボルンから飛行機で1時間ほど。フェリーでも行けますが、時間がかかることと、ホバート国際空港から私の行きたいウイスキー蒸留所が意外と近いという理由から、今回は飛行機で行くことにしました。
23時までの労働を終え、さっそくメルボルン空港へ。安い便は、だいたい早朝に出発ですな・・。仕事で少し疲れていましたが、眠ることなく、空港でほぼ一夜を過ごしました。(プライオリティパスが使えるカフェがあったので腹ごしらえできたのが唯一の救いでしたw)
ホバート国際空港に到着! 「国際」とありますが、タスマニアの空港はこのホバート国際空港のみ。タスマニアンデビルがお出迎えしてくれました。このデビル君、思いのほか精巧にできている・・!
タスマニアの冬は非常に寒いと聞いていましたが、体感、メルボルンとあまり変わらず。ただやはり明け方の風はひんやりしており、寝ぼけまなこを覚ますにはちょうど良かったです。
さて、宿よりも先にウイスキー蒸留所へ向かいます。伝説(?)のサリヴァンズコーヴ蒸留所です。空港からは5.6km離れており、徒歩1時間14分かかります。(事前にGoogle Mapで道は舗装されているのを確認済。!)
半分ほど歩いたところで、向かい側から車に乗った二人組が私に声をかけてきました。私が日本人であり、歩いて蒸留所まで行こうとしているのを知るやいなや、カタコトで「キ●ガイ」と言ってきてびっくりw
おそらく、クレイジーと言いたかったんだと思います。ちょっと会話をすると日本好きの現地の方らしく、蒸留所まで乗せていってくれることになりました。
5分もしないうちに、サリヴァンズコーヴ蒸留所に到着。
蒸留所は、なんだかモダンで小ぎれいな印象。サリヴァンズコーヴ蒸留所は1994年創業とオーストラリアの中では歴史のある蒸留所ですが、つい最近、移転したみたいです。
サリヴァンズコーヴ蒸留所がユニークなのは、なんといってもシングルカスクにこだわっているところ。大規模な蒸留所では、ウイスキーの香りや味に一貫性を持たせるために、数多くの原酒を混ぜ合わせて画一的な製品を造ることがしばしばですが、サリヴァンズコーヴでは樽の個性を大切にしています。
樽の、ウイスキーの個性を尊重し、計画にそってウイスキーを造ることをせず、風味がピークに達したときのみ、ボトリングされるのです。
蒸留所施設自体はまだ準備中とのことで、見学ができませんでした。2024年の11月にはツアーを開始するらしいです。(うろ覚え情報)
なので今回は、テイスティングだけすることに。テイスティングルームは2階にあります。
非常にラグジュアリーで、高級なラウンジのような雰囲気。ゆったりとしたソファに腰をかけて、テイスティングができます。
テイスティングの内容の前に、サリヴァンズコーヴのウイスキーについて、豆知識を1つ・・。
サリヴァンズコーヴのウイスキーは、とにかく高いです!!! シングルカスクで、かつ製造コストが高くつくというからだと思いますが、高級路線のブランディングをとっているように思います。このラグジュアリーなテイスティングルームに訪れて、改めてそれを実感しましたw
早速、ウイスキーのテイスティング。様々なテイスティングコースがありましたが、一番スタンダードな「クラシックス テイスティング」をオーダー。3種のウイスキーがついてきて、30ドルでした。
【テイスティングコメント】
■DOUBLE CASK: DC30TH 47% ALC/VOL
23年と6年熟成の原酒をブレンドした、蒸留所30周年記念のウイスキー。
香り:キャラメルや蜂蜜、ザラメといった甘い香り。ほのかに香木のようなニュアンス。
味:蜂蜜のような甘みの後から、徐々にオークが顔を出してくる。ほのかに、甘みを帯びたピーティさを感じる。(このウイスキーにピートは使っていないと思われる・・)
■AMERICAN OAK SECOND-FILL: TD0437 50.1% ALC/VOL 10年熟成
香り:パイナップルやココナッツ。徐々に塩キャラメル。
味:波打ち際を思わせる潮のニュアンス。麦のやさしい甘み。後味はビターチョコレート。マンダリンの皮。アメリカンオークなのに、レーズンのような甘みを時折感じる。
■FRENCH OAK SECOND-FILL: TD0292 48% ALC/VOL 15年熟成
香り:デーツやレーズンのようなドライフルーツ。アプリコットジャムにザラメ。
味:ストロベリージャム。オーク。アールグレイのような余韻。アルマニャック感もあり、リッチな気分に。
いやー、面白い! 一番最初のダブルカスクは、サリヴァンズコーヴ蒸留所30周年を記念したウイスキー。ピートを使っていないと思うのですが、ほのかにピーティさを感じました。
2番目のアメリカンオーク。一番好みでした。フルーツ感と麦感、そして塩感が絶妙なバランス! アメリカンオークなのにレーズンを思わせるような甘みがあって、個人的に、個性的でもあるウイスキーだなと感じました。
最後のフレンチオークのウイスキーは、まさにフレンチオーク感満載。ブランデー好きでもある私にとってはモロ好みの1本!
とても楽しいウイスキーテイスティングでした。このウイスキーの原料は、すべてタスマニアで育った大麦を使っているそうです。タスマニアのウイスキーの奥深さを実感できました。
さて、お次はブランデーのテイスティング。そう、サリヴァンズコーヴ蒸留所では、ウイスキーだけでなくブランデーも造っているんです! ブランデーのテイスティングは3種類で20ドル。
【テイスティングコメント】
■DOUBLE CASK BRANDY: DCB04A
香り:へレスブランデーを思わせる凝縮感のある葡萄の甘み。ロンサカパのような洗練されたラム酒。後から、長時間煮詰めたレーズン。
味:香りとは裏腹に、かなりウッディ。オークのニュアンスが強く、アフターにはアーモンドの皮。若干のシトラス。
■AMERICAN OAK EX-TAWNY: TDB0045
香り:クリスマスケーキの上にのっている砂糖菓子。メープルシロップ。
味:ラム酒、様々なスパイス、ブドウの皮。若干のゴム。アフターはオークに、クローブ。
■FRENCH OAK EX-TAWNY: TDB0025
香り:上品なダークラム。お香のように、立ち上るような香りたち。煮詰めたアプリコット、クレームブリュレ。
味:サルタナレーズン。プラム。コニャックを思わせる味わい。甘いフルーツの味わいを、オークのニュアンスが引き締めるような後味。
3種のブランデー、樽も葡萄品種も異なるのに、アフターに感じる樽のニュアンスに共通点があってとても興味深かったです。そしてサリヴァンズコーヴのブランデーは、香りと味わいにギャップがありますね。とても面白い体験でした。
サリヴァンズコーヴのウイスキーは、オンラインショップではほとんど品切れで、オーストラリアのボトルショップ(酒屋)でもほとんど目にしません。シングルカスクなので、生産量が限られているためにあまり出回らないのだと思います。しかし蒸留所内ではボトルの販売もしていますので、気になるボトルがある方は、是非足を運んでみるといいかもしれません!
2時間くらい時間をかけて、計6種のウイスキー&ブランデーを堪能。ゆったりとしたソファとラグジュアリーな空間のおかけで、リラックスした時間をすごせました。
蒸留所を後にして、宿へ向かいます。最初の宿は、ホバートより東側にある長閑な住宅街。後から知ったのですが、この宿はホテルではなくシェアハウスでした。(どおりで安かったわけだ・・。)
タスマニアに初めて行かれる際は、シティ内に泊まることを強くオススメします・・! 唯一の公共交通機関であるバスも本数が少なく、またレストランやスーパーも少ないので、車がないととても不便。今回は運よく、またもや通りがかった女性の方が車に乗せてくれて、宿まで連れていってくれました。親切な方に感謝・・!
次回の記事は、ベルグローブ蒸留所訪問記です。乞うご期待!