オーストラリア人も知らない人が多い、知る人ぞ知る「アペラワイン」。スペルは「Apera wine」と書きます。ウェブ検索してみると「Apero wineではありませんか?」と表示されますが、「Apera」です。この記事では、オーストラリア現地の人にもあまり知られていない、アペラワインについて書いていきます。

私がこの「アペラワイン」を知るきっかけになったのは、メルボルンにあるスターワード蒸留所でのウイスキーテイスティングでした。スターワード蒸留所のウイスキーは、オーストラリア産の赤ワイン樽で熟成させることで有名です。ここでウイスキーをいくつかテイスティングしていくなかで、赤ワイン樽ではなく、“「アペラワイン樽」で熟成させたウイスキー”に出会いました。このアペラワイン樽熟成のウイスキーの、芳醇で濃厚な甘みがとても美味しく、まるでデザートのようで、非常に印象的でした。下の写真は、スターワード蒸留所が誇る、アペラワイン樽熟成のシングルモルトウイスキー。(めちゃ旨なデザートモルトでした!テイスティングコメントはこちら!)

早速、メルボルンの酒屋をめぐり、店員さんにアペラワインについて聞いてまわったところ、「オーストラリアで造られているフォーティファイドワオーストラリア人でも知っている人が少ない。名前を知っていてくれて嬉しい!」と興奮気味に言われました笑。どうやら、アペラワインは、オーストラリアのフォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)のようです。アペラワインについて、分かったことを下に解説していきます。
【そもそもフォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)とは?】
フォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)とは、醸造工程中にアルコール(ブランデー)を添加し、ワイン全体のアルコール分を高めることで、味にコクを持たせ保存性を高めたワインのこと。フォーティファイドワインには、通常のワイン(スティルワイン)同様に赤ワイン・白ワイン、そして味わいはドライと呼ばれる辛口のものから甘口のものまで、バラエティに富んでいます。スペインのシェリー、ポルトガルのポート、マデイラが世界三大酒精強化ワインと呼ばれており、さらにイタリアのマルサラワインを加えて世界四大酒精強化ワインとされています。

メルボルンの酒屋店員さん曰く、「アペラワインはオーストラリアのシェリーみたいなものだ」とのこと。それもそのはず、使用しているブドウ品種も、熟成方法もシェリーと同じなのです。
シェリーに使われるブドウ品種「パロミノ種」は、アペラワインにも使われています。シェリーの産地であるへレスのブドウ栽培面積の約95%を占めているこのパロミノは、香りや酸味、糖度が控えめなため、フォーティファイドワインに適しているとされています。スペインだけでなく、オーストラリアでも生産されているんですね。調べてみると、アメリカのカリフォルニアでも、パロミノ種のブドウが栽培されているようでした。
次にアペラワインの熟成方法についてですが、シェリーの伝統的な熟成方法であるソレラシステムが採用されています。ソレラシステムとは、いうなれば「”ウナギ屋のタレ”システム」のようなもの。ちょっとだけ解説していきます。

上の写真をみると、ワイン樽が4段に積み上げられていますが、古さによって階層が整理されており、一番下の樽に、一番年数の古いワインが入っています。この樽を「ソレラ(Solera)」と呼びます。一番下にあるソレラの上の段の棚は「第1クリアデラ」、そのまた上を「第2クリアデラ」と呼び、上にいくにつれて若いワインが入っています。
一番古いワインが入っているソレラからボトリングをしていき、ソレラの減った分を、その一段上の「第1クリアデラ」からつぎ足し、さらにその減少分を「第2クリアデラ」からつぎ足しをしていきます。この仕組みを「ソレラシステム」といいます。古いものから新しいものまで異なる年代のワインをブレンドしていくことで、安定した品質、味わいをつくりだしているんですね。まさにウナギ屋のタレのよう。(ちょっと違う・・?)
アペラワインは、シェリーに使われるブドウ品種を用いて、シェリー同様の熟成方法「ソレラシステム」を採用していることが分かりました。そこでやっぱり気になるのが、アペラワインの味ですね!リカーショップの店員にオススメしていただいたアペラワインを購入して、実際に飲んでみました。

購入したのは「MCWILLIAM’S」というブランド。ニューサウスウェールズ州の南のほうにワイナリーがあるようです。今回はシェリーでもお馴染の表記であるドライ、ミディアムドライ、そしてスイートを3本買ってきました。度数はいずれも17.5度です。気になるお値段ですが、1本あたり約AUD8~10で購入できます。酒税の高いオーストラリアですが、意外に安くて安心しました。ワラビーのエチケットでお馴染のワイン「イエローテイル」と同じくらいの値段です。

早速テイスティング!滞在先にワイングラスがなかったので、お気に入りのウイスキーテイスティンググラスで飲みます。ドライもミディアムも、色合いは麦わら色。それに比べてスウィートは少し淡く、ゴールドのような色合いです。


【テイスティングコメント】
■ドライ
香り:開栓したてはワインビネガー、味醂。徐々にイースト酵母、シトラス、かすかにハーブ。時折、蜂蜜や巨砲のような甘やかな香り。飲み終わった後のグラスからはトロピカルフルーツ。香りは非常におとなしい。
味わい:「ドライ」なのに甘さがしっかりしている。イースト酵母、コッペパン。シトラスとトロピカルフルーツ系の甘さ。野草や刈った後の草のようなニュアンスがあり、口の中の水分が奪われる感じがする。
総評:これはドライなのか?というのが率直な印象。食前酒には適さないが、安価で美味しいフォーティファイドワインであることは間違いない。
■ミディアムドライ
香り:イースト酵母。シトラスと、完熟していない青さのトロピカルフルーツ。徐々に甘い香りが強くなってくるが、香りは非常におとなしい。
味わい:香り以上に味わいは甘め。黄桃たっぷりのフルーツポンチのような甘みがある。イースト酵母。アフターには、ハーブの清涼感とかすかなナッティ感。若干、スピリッティな余韻。
総評:フルーツポンチのような甘さが印象的。氷1つとソーダ少々入れてもよさそう。
■スウィート
香り:果汁たっぷりの白桃に黄桃。ナタデココ。フルーツポンチの汁。ごくわずかにレモンのような酸味のある香り。
味わい:ネクタージュースのような濃厚な甘さ。ジューシーな黄桃。
総評:大人のトロピカルフルーツジュースみたい。カクテルにしても美味しそう。

全体的に甘みが強い!!
ドライに関しては、「ティオペペ」くらいの味わいを想定していましたが、想像以上に甘かったです。しかし安価ながら、とても楽しめるフォーティファイドワインでした。アペラワイン、侮りがたし! 個人的には、ストレートに甘さを楽しめるスウィートが一番好みでした。甘さに全て振り切っている潔さが好きですね。(初めてオーストラリアで買ったお酒という思い出補正もかかっているかも!?)

アペラワインとのマリアージュとか、ペアリングとかそんなたいそうなもんじゃないですが、メルボルンの市場で買ったこの「WALNUT DATE」、胡桃デーツはアペラワインとけっこう合いました。甘い食べ物と甘い飲み物の組み合わせなんですが、意外とアリ! おすすめです。


