神戸を代表する老舗珈琲店、「にしむら珈琲店」。


創業は、なんと第二次世界大戦終戦から3年後の1948年。
空襲で焼け野原となった神戸・北野の街角に、わずか3つのテーブルだけを備えた小さなお店を開いたのが始まりだそうです。

そんな長い歴史をもつ「にしむら珈琲店」は、地元の人々はもちろん、観光客からも長く愛され続けています。2022年5月時点では、神戸市に7店舗、芦屋市に1店舗、大阪・梅田に1店舗の、計9店舗を展開しています。
なかでも、日本初の会員制喫茶店としてオープンした「北野坂 にしむら珈琲店」や、ドイツ風木組みの外観が印象的な「中山手本店」は特に有名です。
今回は、その「北野坂 にしむら珈琲店」を訪れました。
※1995年に一般開放され、現在は会員制ではありません。



外観に負けず劣らず、店内も高級感にあふれた洗練された空間。
かつて会員制だった頃の面影が随所に感じられ、まるで洋館に足を踏み入れたような雰囲気です。

夜に伺いましたが、照明は控えめで、どことなく厳かな空気も漂っていました。
メニューブックも実に立派で驚かされます。木製でずっしりとした重みがあり、お店の風格を感じさせる一冊でした。

ここ北野坂店では、7~8月限定で「氷の器のアイスコーヒー」という、その名のとおり氷の器に注がれたアイスコーヒーをいただけます。
数量限定で、なんと1,800円!(2022/05現在)

どうやら、ほかの店舗では提供されていないようで、この北野坂店ならではの特別なメニューであることがよく分かります。
今回注文したのは、アイリッシュコーヒーと、タマゴとハムのサンドウィッチ。
2階はレストランになっているようですが、キッシュやサンドウィッチ、ケーキなどの軽食は1階でも注文できます。
アイリッシュコーヒー ¥1,900

こちらのアイリッシュコーヒーはなんとお値段、1,900円!(2022/05現在)
なかなかのお値段ですが、さすがは高級店。卓上で炎を使ったパフォーマンスを披露してくれました。
マスターがヨーロッパで入手したという、アイリッシュコーヒー専用のウォーマーを使用します。
使用されるウイスキーは「ブッシュミルズ」。
1オンス以上は入っているであろうグラスをゆっくりと回転させながら、じっくりと炎で温めていきます。
甘さ控えめでお願いしていたので砂糖は少なめですが、きちんと加えられています。
熱が加わることで、ウイスキーと砂糖が少しずつ溶け合い、甘く芳しい香りがゆっくりと立ちのぼっていきます。

十分に温まったところで、マッチの炎をグラスの中のウイスキーへ近づけ…着火!
なんともワクワクする瞬間です。

琥珀色のウイスキーに青い炎が宿り、生き物のようにゆらゆらと揺れ続けます。
まるで生命が吹き込まれたかのような、そんな美しい光景。
一定時間が経つと、グラスをウォーマーから外し、コーヒーを注いでいきます。


液面がグラスの半分ほどまで達したところで、青い炎はふっと静かに消えました。
飲む前から、ウイスキーとコーヒーが織りなす、ほろ苦くも甘露な香りが鼻をくすぐります。

最後の仕上げに、きれいな形をした固形状の生クリームをやさしく浮かべれば完成。
しっかりとした固さがあり、美しい形は最後までほとんど崩れませんでした。
素敵なパフォーマンスを堪能したあとは、いよいよ実食(実飲?)です。
生クリームはしっかりとした甘みがあり、コーヒーからは小豆や煮豆を思わせる、どこか和のニュアンスを感じました。不思議で印象的な味わいです。

使用しているウイスキーと砂糖の組み合わせによるものなのでしょうか。
飲み進めるにつれて、まろやかな酸味も顔をのぞかせます。おそらく中煎りくらいのコーヒーを使っているのでしょう。
パフォーマンスは本当に素晴らしかったのですが、味わいは少し私の好みとは異なり、全体としてやや輪郭のぼんやりした印象を受けました。

タマゴとハムのサンドウィッチ。(本当はキッシュを食べたかったのですが、売り切れ…泣)
しっかりとしたボリュームがあり、盛り付けもとても美しかったです。

ホスピタリティも素晴らしく、非常に満足度の高いお店でした。
地元の人々にも観光客にも長く愛され続ける理由が、よく分かります。
これからもずっとこの場所にあり続けてほしいと心から思える、そんな名店でした。



