オススメのお酒を紹介するコーナー第2弾は、ガイアナ共和国が誇るラム酒「エルドラド」です。アイリッシュコーヒーのブログらしく、第一弾に引き続き今回もアイリッシュウイスキーを紹介する予定だったのですが、どうしてもオススメしたかったので……。どうか許してください。

このエルドラドは、私にとって特別な思い出のあるラム酒です。
カナダ・バンクーバーに短期滞在していた頃、私はこのエルドラドをよく飲んでいました。カナダは酒税が非常に高く、特にウイスキーは日本の市場価格の2倍以上するものも珍しくありません。そのため、好きだったウイスキーはなかなか気軽に手が出せませんでした。
そんななか、ラム酒だけは比較的手頃な価格で手に入ったので、酒屋に並ぶ銘柄を片っ端から飲み比べていました。バカルディやハバナクラブといった定番から、少しマイナーなものまで多くのボトルを一通り飲んでみて、そのなかで一番心をつかまれたのが、この「エルドラド」だったんです。
バンクーバーでこのラムに出会い、すっかりハマって以来、日本へ帰国した今でも、ときどきボトルを開けます。一杯口に含むたび、あの頃の空気や街並みが、ふっとよみがえるような気がするのです。

エルドラドをおすすめする理由は、濃厚で力強い甘みをストレートに味わえること。
ストレートやロックで楽しむのはもちろん、ラムレーズン作りにもぴったりです。さらに、このクオリティでありながらコストパフォーマンスにも優れているのは、大きな魅力だと思います。
さて、エルドラドがどのようなラム酒なのかをご紹介する前に、まずは「ラム酒とはどんなお酒なのか」について、簡単に触れておきます。

ラム酒とは、サトウキビを原料とした、世界4大スピリッツの1つに数えられる蒸留酒です。カリブ諸国だけでなく、フランスやアメリカ、南米各地、日本でも造られています。
ラム酒は大きく分けて、①原材料・製法、②熟成期間・熟成方法、③生産国のルーツによって、それぞれ異なる特徴や個性を持っています。
①原材料・製法
・トラディショナル:サトウキビジュースから砂糖を製造する際にできる糖蜜(モラセス)を原料とする製法です。ラムはもともと砂糖づくりの副産物として発展してきた歴史があり、製糖工程で取り除かれた糖蜜を利用して造られてきました。現在でも世界で生産されるラムの約9割が、このトラディショナル製法によるものといわれています。 ・アグリコール:19世紀にフランス領の植民地で確立した製法で、砂糖を造らず、搾りたてのサトウキビジュースをそのまま発酵・蒸留します。サトウキビ本来の風味を楽しめるのが特徴です。 ・ハイテストモラセス:サトウキビジュースを加熱してシロップ状に濃縮したものを原料とする製法です。糖度は70~80%と高く、一般的な糖蜜(約40~50%)よりも糖分を多く含んでいます。
②熟成期間・熟成方法
・ホワイトラム:基本的に無色透明のラム。樽熟成を行わないもののほか、短期間樽熟成したあとに濾過して色を取り除いたものもあります。世界で最も生産量が多く、カクテルベースとして広く親しまれています。カリブ海諸国でも日常的に広く飲まれているスタイルで、地元で消費されるラムの90%がホワイトラムと言われています。 ・ゴールドラム:一般的な目安として、2カ月から3年未満熟成させたラム。基本的に内側を焦がしていない(チャーリングしていない)オークの大樽、またはバーボン樽などで熟成される。熟成年数ではなく、色付き具合を見ながら瓶詰めのタイミングを判断する生産者も多く、大樽の側面にガラスの小窓(サイトグラス)が付いており、原酒の色を常に確認できるようになっていることがある。 ・ダークラム:一般的な目安として、3年以上熟成させたラム。長期熟成による濃い色合いと重厚な味わいが特徴で、ゴールドラムとあわせ、熟成ラムの約9割は輸出向けとされている。 ・スパイスドラム:ラムにフルーツやハーブ、香辛料などを砂糖とともに漬け込んだ混成酒です。日本では「リキュール」に分類されます。また、長期間じっくり漬け込むタイプはフランスで「ラム・アランジェ」と呼ばれています。なお、「ラムパンチ」は本来、その場で果汁やスパイスを加えて作るカクテルを指すため、瓶詰めの漬け込みタイプとは区別されます。
③生産国のルーツ
ラム酒は、各生産地の旧宗主国ごとに独自の進化を遂げてきました。
ここでは、イギリス系、フランス系、スペイン系に分けて紹介します。
・イギリス系:綴りは「RUM」 骨太で濃厚な味わいが特徴です。特にガイアナ、ジャマイカのラムはこの傾向が強く、スコッチウイスキーの蒸留技術の影響を受けたスタイルが多く見られます。 (代表銘柄:マイヤーズ、アプルトン、レモンハート) ・フランス系:綴りは「RHUM」 サトウキビ本来の風味を楽しめるアグリコールラムが多く、コニャック文化の影響を受けていることから、「VSOP」や「XO」といったコニャックおなじみの等級表記が使われることもあります。 (代表銘柄:バルバンクール、ラ・マニー) ・スペイン系:綴りは「RON」 スペイン系は"島もの"と"大陸もの"で個性が大きく異なります。 島もの:口当たりがやさしく、比較的軽やかな味わい(度数も控えめ)のものが多いのが特徴です。 (代表銘柄:ハバナクラブ、サンティアゴデクーバ、バカルディ) 大陸もの:ボディが厚く、しっかりといた甘みやコクを感じるものが多く見られます。 (代表銘柄:ロンサカパ、ロンアブエロ)
宗主国のルーツによってラムの綴りが「RUM」「RHUM」「RON」と異なるのは、とても面白いポイントですね。ちなみに、日本産のラム酒は「RUM」と表記されているものがほとんどです。

さて、今回紹介する「エルドラド」は、①トラディショナル製法 ②ダークラム ③イギリス系 のラムとなっています。
エルドラドは、南米で唯一英語を共通語としているガイアナ共和国のラム酒。ガイアナのラムは全て、ガイアナに現存する唯一の蒸留所であるダイヤモンド蒸留所で生産されており、同蒸留所のオフィシャルボトルなんです。

一般的なラインナップは12年、15年、21年。公式ホームページをみると、3年、5年、8年に加え、25年もあるようです。一番ポピュラーなものは12年でしょう。
特徴は、なんといっても濃厚な甘みでしょう。エレガントで端正な甘さというよりも、ボディのある力強い甘みが前面に現れます。その飾らない存在感こそが魅力であり、私にとっては「ラム酒らしいラム酒」と呼びたくなる一本です。

【テイスティングコメント】
エルドラド 12年
□香り:レーズンやナツメヤシを思わせる凝縮したドライフルーツ。焦がした砂糖やカラメル様の甘やかさに完熟した果実の芳醇なアロマが重なる。奥からほのかなスパイスとオレンジ皮。
□味:凝縮感のある豊かな甘み。厚みがあるコクとシルキーな口当たりが心地よい。香りから受ける印象と味わいが見事に調和している。
□総評:ドライフルーツを思わせる濃密な果実味と深い甘みが魅力。エルドラドらしい豊潤なスタイルを存分に堪能できる一本。
エルドラド 15年
□香り:12年で感じられたレーズンやナツメヤシに加え、キャラメルやトフィー、濃厚なバニラの甘美な香りが一層豊かに広がる。さらにダークチョコレートやスパイスが複雑さを与え、奥行きのあるアロマを形成している。
□味:12年をさらに上回る凝縮感のある甘み。芳ばしいナッツを思わせる重厚なコクが広がり、余韻ではレーズンを思わせる濃密な果実味が力強く持続する。ごくわずかに硫黄を思わせるニュアンスも感じられ、味わいに独特の個性を添えている。
□総評:圧倒的な濃厚さにまず心を掴まれるが、じっくりと向き合うほどに、多層的な香味の変化と複雑さが姿を現す。甘さだけでは語れない、熟成が生み出す奥深さを堪能できる一本。
12年と15年の比較になってしまい、絶対的な評価でなくなった気もしますが、ご容赦を!
私はこれまで、アグリコールラムや、スペイン系のロン・サカパ、ロン・アブエロを好んで飲んできました。しかし、このエルドラドもまた、それらとは異なる魅力を持つ一本です。
ロン・サカパやロン・アブエロが上品で洗練された甘みを持つラムだとすれば、エルドラドは、より骨太で力強く、濃密な甘みが魅力です。どこか素朴で飾らない甘さが心地よく、気づけば何度もグラスを手に取ってしまいます。
家に一本、常備しておきたくなるラムです。
「ラム酒には、こういう甘みを求めていた。」
そう思わせてくれる一本だと思います。
まずは12年だけでも、ぜひ一度飲んでみてください。ハウスワインならぬ、“ハウスラム”として迎えたくなる一本になるかもしれません。
Australian Whisky Book (ビクトリア州編&タスマニア州編Ⅰ)
kindle Unlimitedでもご覧いただけます!




